ナゴヤファッションコンテスト過去受賞者へのインタビューVol. 15
「ナゴヤファッションコンテスト2014」奨励賞 永井孝幸さん
「ナゴヤファッションコンテスト2014」で奨励賞を受賞され、現在は瀧定名古屋株式会社様でテキスタイルデザイナーとして活躍されている永井孝幸さんにお話を伺いました。
■ファッションを学ぼうと思ったきっかけ・動機は何ですか。
ファッション業界を目指そうと決めるまでは正直、大きな夢や目的はありませんでした。
私は出身が石川県金沢市なのですが、販売員になる前に名古屋でウィンドウショッピングをした時にこの業界で生きようと決めました。きっかけは好きだからと単純なことでしたが、早くから目指す道を見つけられたことは本当に幸運だったと思います。
■現在に至るまで、どのように活動されてきましたか。
販売員をした後、名古屋モード学園で4年間学びました。卒業後は、岐阜県の会社に製品企画デザイナーとして就職しました。
SPA(自社で企画した製品を自社の店頭で販売する)を行っている企業でアウター企画を担当し、デザイン、縫製仕様、副資材(ワッペンなどオリジナル副資材も作成)、原価を決めて商品化、店頭での販売状況をリターンする。この一連の流れを業務で行うことは本当に勉強になりました。
その後2年半くらいして、企画とパターンが分かる私にCAD課への異動の話があり、パタンナーになりました。この時、グループは同じですが製造生産メインの会社に変わりました。パターンは学生時代から引いていたので、CADソフトの操作方法とプロダクトパターンでの社内ルールなどを教えてもらい、すぐに業務に取り掛かりました。
実際はパタンナーをしていたのは3ヶ月のみで、製品生産管理へ異動になりましたが、CADソフトを所有したまま異動させてもらえたので、先方からの型紙確認や、一部修正、縫製仕様書作成、仮マーカーなど自分でも行うことができ業務をスムーズに進められました。先方サンプル作成、確認、工場への連携、生産数量の確認と、慌ただしかったですが楽しかったですね。
ただ、会社所在地の立地条件が良くなく、その頃金山から岐阜方面へ通勤していましたが、今後の生活の事も考え退社を決意しました。今はご縁があり、瀧定名古屋株式会社で働いています。
やはり洋服は素材が命ですね。
■現在の仕事内容は何ですか。
紳士服地カジュアル部(10課)にて企画デザインを行っています。
仕事内容は大きく分けると5つ。生地をデータ上で織り上げるソフトを使用してシミュレーション作成(織柄、配色、プリントを現物作成前に再現する)、仕入れ先へのビーカーやマス(試織、プリント)依頼、スワッチ(生地見本帳)や下げ札販促物の作成、HPの運営(新作スワッチや、生地説明動画を掲載)、展示会での什器準備や展示物作成です。
展示会準備ではカジュアル部以外との連携も多いことや、仕事内容が一連で繋がっているため、忙しく楽しい毎日を過ごしています。
以前の会社では、企画デザインはメンズを、パターンはレディス・メンズ両方を行っていました。現在はメンズカジュアルのテキスタイルデザイナーとして働いています。もともとメンズ・レディスの希望はありませんでしたが、服地・生地を扱いたいという思いはありました。
■ナゴヤファッションコンテストに参加した際の感想・思い出は。
応援してくれたクラスの友達には本当に感謝しています! 大変だけど楽しかったです。
また、プリントのデータとプリント下地のイントレチャートを作成しましたが、黙々とした作業がずっと続いたことが印象的でした。
私はどちらかというとパターンや縫製の方が得意で絵があまり上手くなかったので、ナゴヤファッションコンテストの1次審査を通過して、とても嬉しかったです。絵については、学校に熱心に指導していただき非常に身になりました。製品の仕事ではハンガーイラストを描く事が多いですが、その際のバランス感覚や、ステッチの位置から指示する縫い代の倒し方向、縫製工程やパターンを考える際にも役立っています。
卒業年度でしたが就職活動よりコンテストを優先していて、先生に注意されました(笑)。だからこそ、当日のファッションショーは心に響きました。今までやってきたことが形になり、奨励賞を頂いて披露されるというのはとても光栄で、終わったことへの安堵感や高揚感もありました。ファッションショーはフィジカルなもので、その環境でしか分からない空気感があるので、そういった面でも響きました。
■これまでの活動で嬉しかったことは何ですか。
私が嬉しいことは、自身が作成したものが誰かのために役に立つことです。同僚からお礼を言っていただけたこと、店頭で世に出て好評だったこと、営業の方に商談に繋がって良かったと言われることなど、小さなことですが、沢山あります。
デザインは自分の心が反映されますが、自分のためにするものではないと思っています。服に限らずプロダクトは作成者の意図や想いが表に出るものですが、プロダクトは誰かが使用するとか誰かのために作られるものなので、自分のためのデザインというより他の人のための制作・デザインであると思っています。アーティストもデザインをしますが、デザイナーはあくまでも設計なので、その点は少し意味合いが違うと思います。
■今後の目標や夢は何ですか。
夢は、日本のファッションビジネスを先導する日本人の1人になることです。他の方々を引っ張っていけるような人になり、実際に世に出たものが社会に反映されるようになることが目標です。
そのためには、モノづくり以外のことも勉強して学び続けなければいけません。環境課題や技術の進歩によるマーケットの変化など優先的に学びたいですね。
営業やデザイン職、品質管理、色々なことが合わさってファッションの仕事として成り立つので、服づくり全体に関わるには洋服の知識だけではなく、環境問題やCSRなどの知識が必要です。現状で自身が取り組める身近な目標としては、今年10月にあるCSR1級1次合格です。
■これからデザイナーやファッション関連の仕事を志す人に向けて一言お願いします。
夢は幻ではなく目指し叶えるものですから、変化し続けるファッション業界にて一人一人が活躍できることを心から願っております。
専門学校から服飾の勉強をしてデザイナー、ファッション関連の仕事をされる方が多いと思います。大切な学習期間である学生時に取り組んでおくと良いことを3つお勧めします。
①グループでの制作や発表の機会が多いと思うので、意見を言った後にまとめ、決定する練習をする。(物事を決断に運ぶことは大切であるため)
社会に出たら話し合って意見を決めていくので、発言の練習のためにも課題発表やグループ活動に積極的に取り組みましょう。会議などは議題に対して何かを決めるために集まるので、そのために提案や意見をまとめて決めていくように運んでいける人材になってほしいです。
②コンテストへの挑戦(学生時代しかできないし、とても楽しい)
コンテストで1次審査を通っても、1人きりで制作をしていくのは難しいです。環境的にも時間的にも、学生時代しかできないと思います。
③授業で学ばないことで自身の将来に役立つことを見つけて勉強する。(学問のコースが違っても教科書を探して買う、検定試験を受けるなど、就職後も自身で勉強することは物事を考える上でとても大切)
服を作る仕事に携わるのであれば、環境問題やマーケット、ビジネスのことは勉強してほしいです。専門学校だと、どうしても服飾コースなら服飾が中心になりますが、学校のコースで服飾とファッションビジネスを分けない方が良いとも思います。
販売員についても、作られた物の良い所をお客様に伝え、お客様のニーズを掘り起こして提案することが必要になります。販売員の能力で売上が全く変わってくるので、販売員を目指す人も型紙や素材など服の中身についての勉強をした方が良いと思います。
なぜ勉強するのかというと、考えるために勉強するのです。知識がないと考えられません。学んだことを前提として他の物と組み合わせて考える、ということが大事です。
ファッション業界も変化しており、ファッションや服のあり方自体が問われています。それに対して何をするかという時に、服を作ることはもちろん、他のビジネス市場はどうなっているのか、海外に売るのであればどうすればいいのか、そういうことを考えるために勉強してほしいです。
ナゴヤファッションコンテストを通じてファッションを志す方への後押しとなれば幸いです。ありがとうございました。