イベント

ナゴヤファッションコンテスト過去受賞者へのインタビューVol. 16

「ナゴヤファッションコンテスト2015」で入選され、現在はダイショーファッションテキスタイル株式会社様でテキスタイルデザイナーとして活躍されている間塚有香さんにお話を伺いました。

ファッションを学ぼうと思ったきっかけや動機を教えてください

中学生の時は絵を描くことが好きで、そこから描いたものを形にする過程に興味を持ちました。親戚が趣味で服作りをしていたことに影響を受けて服飾を学べる高校に入学し、卒業後はより高いレベルで学びたいという気持ちで専門学校に入学しました。

在学中から現在に至るまでの経緯を教えてください

就職活動を始めた当初はデザイナー志望で、専門学校の授業ではパターンに力を入れていたのですが、これまであまり学んでいなかったことを仕事にしたいという思いが強くなり、テキスタイル関連の仕事に興味を持ちました。
しかし、規模が大きい企業はカットソーなど部門で分かれていることに苦手意識を感じ、方向性を考え直すために一旦就職活動を休止しました。
その後最終学年になり、ナゴヤファッションコンテストに取り組んでいる最中、現在の会社の求人を見かけました。当時の求人が男性の営業職の募集でしたが、会社説明会に参加し、コンテストで生地デザインから取り組んで作品を制作した際の経験も説明した結果、ご縁があり採用されました。

現在のお仕事の活動内容とその魅力や苦労されたことを教えてください

テキスタイルデザイナーとして、トレンドを予測して、服の形に合う素材感、色味や柄を提案し、現在世の中にない素材づくりをしています。失敗することもありますが、常に挑戦を繰り返しています。
例えばプルミエールヴィジョンなど海外の展示会に出張することもありますが、現地での空気感、ディスプレイや音楽などもテキスタイルデザインに大切な要素だと感じています。

入社されてからこれまでに何か変化はありましたか?

入社当時は服のトレンドしか追っていませんでしたが、例えば、韓国の文化などが流行した際は、メイクなどの色味に併せてトレンドが変化したことから、服は生活の一部でもあるので生活のトレンドを追うのも重要なことだと認識しました。
時世がどんどん変わっていく中で、服のトレンドを追うだけは足りないと考えていて、色の予測には車の色やディスプレイの背景の色に注目することもあり、普段何気なく生活している中にヒントがあることもあります。
経験を積み勉強したことで今は少し目星を付けることができているように思いますが、新しいことがどんどん起こっているため、選別し追いかけていくことがとても難しいと感じています。

ナゴヤファッションコンテストに参加した際の感想を教えてください

専門学校の最終学年にナゴヤファッションコンテストに応募しました。それまでの他のコンテストでは既存の生地を使用して制作することが多かったのですが、学生最後のため一からこだわりたいという思いから、企業に依頼して、生地から織ることやプリントをしてもらい、作品を制作することに挑戦しました。
デザイン画応募の際は、この柄の作品を作りたいという思いをふくらませてデザイン画を描きました。その後、デザイン画審査を通過してから生地をどこの企業に依頼して制作しようか?と検討を始めました。
ジャカード織の生地を使いたいという構想を持っていましたが、専門学校にはジャカード織の企業とのつながりがなかったため、自分自身で企業と直接交渉しました。何十件も電話をして依頼したのですが、その中で、滋賀県の企業が快く引き受けてくださり制作することができました。当時は学生だったため、例えば生地を10m制作するのにどのくらいのコストがかかるかということも知らなかったのですが、とても親身に協力いただきました。
作品を制作したことがきっかけで、実際の工場を見学できたこと、新しい知識を得たこと、新しいご縁やつながりができたことが大きな収穫でした。

また、他のコンテストにレディースで応募しており、並行してメンズにも挑戦したいと思いメンズでの応募に力を入れましたが、メンズのパターンを作成することがあまりなかったためパターンを専攻している友人に協力してもらいました。併せて作品としてバッグも制作しましたが、持ち手の革細工は、当時の担任の先生から指導いただいたことも思い出です。

当時は他のコンテストにも通過していて、日程が重なることや、異なる素材を使用して作品を制作していたためとても大変でした。学校の授業や課題との両立のため、寝る間もなく忙しかったことを覚えています。

ナゴヤファッションコンテストに参加して学んだこと

生地の制作を電話で依頼した際は、突然のことでお叱りを受けたこともありました。それでもやりたいことを丁寧に説明したことで、引き受けてくださった企業があった経験から、諦めずに挑戦することの大切さを学びました。
現在仕事においても、取り組む前に諦めるのではなく、まずはやってみることが重要だと感じています。
また、就職活動を休止したことで、コンテストに力を入れてみようと思ったことも参加したきっかけの一つですし、再開した就職活動ではコンテストの経験もお話しして採用されたことから、このコンテストの経験がなかったら今とは違う会社に就職していたかもしれません。

今後の目標を教えてください

模索中ではありますが、まずは現在の会社で、新しい素材、色、柄の提案をし、私がデザインした生地が日本や世界でもっと流通するように努力したいと思います。

デザイナーやファッション関連の仕事を志す人に向けてのアドバイスやメッセージ

好きなことを突き詰めて、苦手なことに対しても目をそらさず取り組んでほしいです。
幅広いジャンルに視野を広げてください。また新しい技術やシステムはどんどん進化していくので、実務的なスキルは使えるようにしておいて損はありません。

また、希望の職種がデザイナーやパタンナーであったとしても、生地のことをもっと知ってほしいです。ファッション業界の方でも、生地の制作には多くの工程があり時間がかかることや、産地の特徴が知られていないことも多く、より理解してもらうことができたらお互いにスムーズに仕事を進めることができるのに、と思うこともあります。

人材不足と言われる中、日本は特に高齢化が進んでいてどんどんテキスタイル関連の工場がなくなってしまっており、内部の努力だけでは守り切れない状況です。同年代のテキスタイルデザイナーがとても少ないため、若い人がテキスタイルに興味を持ち、業界に進んでもらうことが必要だと感じています。仕事でもお客様に要望されてから対応するのではなく、先取りで提案できるようにするためには若い人の力が不可欠だと感じています。

学校に求人が無くても、探してみれば募集をしている企業もあるので、興味を持った方はぜひ自らチャレンジしてほしいと思います。

ダイショーファッションテキスタイル株式会社