イベント

ナゴヤファッションコンテスト過去受賞者へのインタビューVol. 17

「ナゴヤファッションコンテスト2017」奨励賞受賞 新田至歩さん

「tunica」(チュニカ)デザイナー 新田至歩さんにお話を伺いました。

ファッションを志したきっかけ

高校は普通科に通っていました。制服ではなく私服の学校だったのですが、自己表現が苦手だった私は、自分の気持ちを表現する手段の一つとして、言葉よりも衣服が自分の中で大事な存在となっていることに気が付きました。そういった気づきからファッションというものに興味を持ち、学んでみたいと思いました。
その後、大学進学を検討するうえで、4年間でファッションだけでなく幅広い分野を学びたいという気持ちがありました。名古屋学芸大学のオープンキャンパスに参加した際にファッション造形学科の存在を知り、ここでならファッションのことはもちろん、幅広い分野の学びが叶うと感じ進学しました。結果としていろんな分野での学びがいまの服作りに生かされていると感じています。

ナゴヤファッションコンテストの思い出

ナゴヤファッションコンテストへの応募は、大学進学後に先輩のデザイン画や作品を目にするようになってから意識し始めました。
受賞した際の作品は、手編み部分の糸の合わせ方を何度も試して考えていたので時間もかかりましたし、生地全体のオパール加工も手作業で行ったので大変でしたが、協力してくださる大学の環境があったので恵まれていました。当時一人暮らしで、ワンルームの狭い部屋で染色作業をしていたことも覚えています。作品に対して妥協ができない性格だったので、苦労しながらもとてもやりがいを感じていました。

大学卒業後今に至るまで

大学3年生だった際の11月に新宿ファッションフィールドに通過していて、それが終わったあとも就職活動にはあまり取り組めていませんでした。ただ、ものづくりには携わりたいと思っていて、企業デザイナーというよりも、手を動かして何かをつくりたいという思いがありました。大学での企業説明会に参加されていた企業は、規模が大きいということもあってあまりしっくりきませんでした。また、環境としては、地方でゆっくり自分の好きなものや美しいものに触れながらものづくりをしたいという思いはありました。その後、知人の紹介で面白いニットを作っている工場が長野県にあると知り、そのニット工場に就職しました。
その後、自分自身が提案したブランドラインであるチュニカをスタートさせましたが、数年後工場が廃業することになってしまいました。新卒で私を受け入れ、育ててくれたという気持ちがあったので本当に悲しく、自分自身の決断で仕事を辞めることとは全く違う喪失感を感じていました。新卒で採用してくださったこと、その後ブランドの立ち上げを応援してくれたということは、きっと私になにかの可能性を感じてくださった結果だと思っているので、今でも本当に感謝しています。
その一方で、チュニカというブランドを楽しみにしてくれていたお客様には不安な思いをさせてしまって申し訳ない気持ちでした。
その後は、他のニット工場へ就職するのではなく、チュニカを続けたいという思いから、現在は個人のニットデザイナーとして活動を再開しています。

現在の活動内容

チュニカを再スタートし、楽しみに待っててくださっていたお客様に向けてということで、まずは以前発表した雷鳥ニットの再販をしました。元々お付き合いのある工場ではなく、一から請け負っていただける工場を探してというスタートでしたが、私の考え方に共感をしていただいて、すごく良い関係を築けていると思います。現在いくつかの工場とともに新作の準備を進めているところです。

今後の目標、後輩へのアドバイス

ニットづくりを通してブランドの存在意義や、私自身が思う価値観をお客様と共有したい、そのために今の活動を続けていくことが一番の目標です。日々美しい景色を見て、たくさんのことを考えて作品にアウトプットしていくことを大切にしながら、制作してくださるニット工場の方やお客様とのより良い関係を深めたいと思います。
学生の方へのアドバイスとしては、ものづくりにおいて、自分の感性や、気持ちが揺れ動くものを大切に感じてほしいです。こんな色が好き、逆に嫌いといった気持ちに対して、どうしてそのように感じるんだろうという心の機微や、友人や先生の発言に対する自分の考え、感性を大切にしてほしいです。何気ないことかもしれませんが、自分の心の内側に触れることがきっと自分らしいものづくりに活きてくると思います。
また、実務的な点でいうと、個人のデザイナーとして活動するためには一人で幅広いことをこなす必要が出てきます。自分の将来には関係ないと思うようなスキルも、未来の自分自身のため、という意識を持って取り組むことでより身についていくと思います。

「tunica」ウェブサイトはこちら